車の塗装の傷消しのメカニズムって何?~今回は職人目線で深掘りします。(動画解説)
こんにちは、リキュウコートです。
今回も動画の解説を行います。
今回の動画は、前回№73の動画においてウールバフ磨きを行った、エンブレム跡の気になる輪郭の膨張をペーパーで研磨し、マルチコート剤による「削らない磨き」により改善するという動画です。
前回も解説しましたが、塗装の不具合により、エンブレムの両面テープに何らかの反応し、塗装が膨張した事により、エンブレムの輪郭が残り磨きでは完全な改善が出来ませんでした。
これまでにも、傷消しの能力検証で用いたペーパーを使用して、普段は見られない「傷を傷で消す」というメカニズムを紹介したいと思います。
文字だけ読んでも理解が出来ないと思います。
傷を除去するメカニズムを表現・説明する時に使う言葉です。
塗装の補修などでは今回の様な時にペーパーを使用します。
これが本来のペーパーの使い方であり使用目的です。
コンパウンドもペーパーも材質は違いますが、研磨粒子で構成されている事は同じです。
一般的にペーパーは粗い研磨粒子により強い研磨が可能になります。
その事から、今回の様に粗い研磨粒子で塗装を削る事により、誰もが一目で判る傷が入るのです。
「傷で消す」というのは研磨粒子の粗い傷により塗装を削るという意味です。
しかし、コンパウンドも研磨粒子が細かい事により目で見えないだけで、ペーパーと同様のメカニズムで研磨を行うものです。
今回マルチコート剤の磨きで改善出来なかったのは研磨剤だけの問題ではありません。
勿論マルチコート剤は塗装を削る能力はありませんが、コンパウンドの磨きなら解決するのか?といえば、今回のような指の感覚で判る程の跡を完全に除去する事は困難です。
その訳は、ペーパーの様な粗い研磨粒子により高さの高い部分のみをカッターやカンナ(大工道具)等で削るというイメージでサクサク削る事ができます。
※ ペーパーでは一番高い箇所だけが削れる
しかしコンパウンドの様に細かい粒子でウールバフの様な素材で研磨をすると、高い所も研磨出来ますが、逆に低い所も同じく研磨してしまいます。
その事により、いつまでも段差の改善出来なくて気が付いたら塗装が剥げてしまったという結果になります。
ペーパーの台紙は、ある程度の硬さもあり均等に高い部分だけを削る事が可能になるのです。
※ 柔軟性はあるが硬い台紙にペーパーを張り付けて使用します
動画でも判る様に低い箇所は最後まで削ることなく残っていました。
その事からも無用な研磨で塗装を薄くする事無く、最小限の研磨で済むという事が言えます。
そして今回使用するポリッシャーは私が普段から愛用している「マルチコート剤」と一番相性が良い「ギヤアクションサンダー」を使用しました。
DIYサンダーでも可能ですが、DIYサンダーは回転運動が止まる為にピンポイントでの磨きがし難いという特性がありますが、ギヤアクションサンダーは適度な回転運動がある為に、狙った箇所をピンポイントで磨けるメリットがあり、今回の様に出来るだけ面積も小さく抑え不要な磨きを防ぐ意味で選択しました。 決してDIYサンダーの欠点ではありません。(回転しない方が初心者には安心出来ます)
※ 最終的に研磨出来ていない輪郭が残っている
また、今回の事例の様にコンパウンドの削る研磨で全ての症状が改善出来るという訳ではありません。
症状によっては粗い研磨粒子のペーパーを使う方が塗装に優しい場合もあります。
これらの事は板金塗装屋さんの様な塗装修理の経験が無いと分からない事だと思います。
また、今回の様にペーパーを使用した磨きは、絶対に真似をしてはいけない修理です。
このペーパーの研磨は知識だけでは難しく、何より十分な経験が無ければ何処で止め時かの判断も出来ません。
今回も、ペーパーの研磨で、全ての段差を除去するという事は避けました。
僅かに輪郭も残っていましたが、これ以上研磨をしたら最終的に塗装を剥がしてしまう事も感覚で察知し、磨き後の仕上がり具合もイメージ出来たので途中で研磨を止めました。
マルチコート剤の磨く時にも全てを浸透により除去する事は無理だという事も分かっていました。
もう少し、ペーパーで追い込む事も出来たと思いますが、塗装の「塗り肌」が完全に無くなってしまい周辺との違いが逆に目立って来ることも想定出来ます。
決して言い訳がしたいのではなく、程よい「止め時」というのが一番難しく、完成後のイメージをどれだけ出来るのか?というのが大切な事です。
結果的に、僅かに塗装の剥がれた部分と深い溝(傷)は残りましたが、一見するだけでは見つける事が出来ない程に改善が出来ました。
難しい解説になってしまい申し訳ありませんが、最後に一番大事な事をお伝えして終わりたいと思います。
今回の症状の改善にペーパーを使い最低限の塗装の研磨で済みましたが、このペーパー傷をコンパウンドで除去すると、最低でもペーパー傷の一番深い所までは塗装を削る研磨をしなければ消えません。
ペーパーで削った以上に塗装を薄くする方向になってしまいます。
マルチコート剤の磨きは、ペーパーの傷にコート成分を浸透させる事により除去?「削らない磨き」により傷を除去出来るため、本当の意味での最低限の塗装の研磨により、症状が改善出来るという事が、今回の事例でコンパウンドとの大きな違いがある事が分かります。
※ 一見しただけでは判らない程、改善出来た状態
※ 「ミラーコート剤」のスプレー散布による反応の状態
特別な意味は無かった解説なのですが、動画では一瞬しか見れなかったので気になる方がいらっしゃるかも知れないので少しだけ解説します。
マルチコート剤で下地処理された塗装面にミラーコート剤が合わさると硬化するという反応の一種です。
スプレー後に水分を含んだクロスで「塗伸ばし」「拭き取り」を行う事で水分が加わり反応が促進されるというメカニズムです。(水分が加わると様々な撥水・光沢・硬化反応等が始まります)
今回は奥が深い話で難しい内容でしたが、「削らない磨き」が塗装に優しい磨きである事を解説する動画として紹介しました。
【予 告】 次回からの動画でこのパネルにチャレンジします。
最後までお付き合い頂き有難うございました。
気になった方はサイトも覗いてみて下さい。
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